2026/04/17
戸建て民泊の天国と地獄 「1センチ200万円の恐怖」

戸建てで民泊や旅館業をやろうとすると、「戸建ての方が自由に作れそう」「3階建てなら広く取れるし、人数も入れやすい」と考えがちです。
実際、それはその通りです。
うまくハマれば、戸建てはかなり強い。
ただし、そのぶん落とし穴もきっちり用意されています。
これは実際に自分でやった3階建て戸建ての話です。
その物件は、たしか13坪ほどしかないコンパクトな建物でした。
だからこそ、横ではなく縦に使って広さを取るしかない。
立地も悪くないし、民泊として十分いけると思っていました。
買う前にも自分で寸法は見ました。
ただ、その時は正直、「まあ多分大丈夫だろう」という見方をしていました。
ところが、建築士が入って図面を引き始めた段階で、空気が変わります。
「あれ、これ階段おかしくないですか?」
嫌な予感というのは、だいたい当たります。
確認していくと階段室の幅に問題があり、さらに階段の乗り面も1センチ足りない。
たった1センチです。
でも、この1センチが笑えません。
測る位置が少し違えば、誰でも普通に見落としうる1センチです。
目がかすんでいたわけでもない。
メジャーが壊れていたわけでもない。
ただ、雑に見た、それだけ。
でも、その代償はしっかり100万円単位でお金が飛ぶことでした。
実際には、階段を1階から3階まで全部やり直して、工事費だけでもかなりの金額になりました。
さらに工期が延びれば、そのぶん機会損失まで乗ってきます。
三笘の1ミリならぬ、戸建ての1センチです。
こっちは感動ではなく、高額な請求書がメンタルを削ります。
しかも、この話は階段だけで終わりません。
3階建てになると、階段まわりは縦穴区画として防火上の扱いが厳しくなりやすい。
要は、縦に抜ける階段室が煙突みたいな役割をしてしまうからです。
そうなると、防火戸まわりの考え方も普通の住宅感覚では済みません。
ここでさらに厄介だったのが扉でした。
最初は、狭い家だからこそ引き戸でうまく納めたいと思っていました。
開き戸にすると、扉の軌跡がそのままデッドスペースになるからです。
ところが、防火設備として考えると、普通の感覚の引き戸ではそのまま通らない。
結局、サッシ屋にも相談して、閉鎖の仕組みまで含めて工夫して、何とか納める形に持っていきました。
ここで自分が一番言いたいのは、
「自分が甘かった」という話だけではありません。
こういうことは、プロでも普通に起きるということです。
建築士でも、実際に図面を起こしていく中で初めて気づくことがある。
現場を見てきた人間でも、物件が良く見えると「このくらいならいけるだろう」と思ってしまうことがある。
法律や基準は、最初から全部頭に入っていて当然、という世界ではありません。
むしろ、走りながら照らし合わせて、調べながら潰していくことの方が多い。
だから今回は、運が悪かったとも言えます。
でも同時に、運が良かったとも言えます。
これが工事完了後の検査で見つかっていたらもっと痛い。
営業開始後に発覚していたら、旅館業法や建築基準への不適合として、営業に支障が出るリスクもある。
そう考えると、スタートラインで見つかったのはまだマシでした。
笑い話にするには少し時間がかかる金額でしたが、あとで爆発する爆弾を先に見つけたと思えば、あれはあれで良い授業料だったのかもしれません。
しかも結果的には、防火戸の数や間取りの工夫をちゃんと考えたことで、使いやすい部屋になりました。
今でも回転は良いですし、使いやすかったというレビューも入ります。
人間万事塞翁が馬とはよく言ったもので、あの時は「終わった・・・」と思った話が、あとから見ると宿の完成度を上げるきっかけになっていました。
戸建て民泊は夢があります。
ただ、夢があるからこそ、見るところを間違えると一気に現実に戻されます。
階段の1センチで100万円単位が飛ぶ。
戸建ての世界では、これは冗談ではなく普通に起こり得る話です。
だからこそ、買う前に見る。
図面にする前提で考える。
そして、一度痛い目を見た人間は、次から異様にそこに強くなる。
宿づくりは、うまくいった話だけでは強くなりません。
一度痛い目を見た場所には、次から自然と目が行くようになります。
だから失敗した経験は、あとから効いてきます。













